こんにちは、ひでこです。
ここでは、少しだけ私自身のことをお話しさせてもろうています。
わたしには高齢の母がいます。
父はすでに他界し、母はひとり暮らし。
ほんとうは一緒に暮らしたほうが安心なんですよね。
でも、母には長年の友人がいて、「離れたくない」と別居を選びました。
とはいえ、98歳ともなると、やっぱり心配です。
最初は要支援2だった介護認定も、年齢とともに要介護4に。
地域の福祉センターにお世話になりながら、なんとか今の暮らしを続けていました。
そんなある日――母が転倒してしまったんです。
ここから、私のなかでいろんなことが動き始めました。
その時のことを、今回はまとめさせてもらいますね。
大腿骨骨折――そこからすべてが始まった
近所の整形外科で、母の足を診てもらいました。
レントゲンを見た先生が、静かに言いました。
「大腿骨が折れていますね」
その一言に、胸の奥がすっと冷たくなりました。
高齢になると、ちょっとした転倒でも折れてしまう。
頭ではわかっていても、実際に言われると息が詰まります。
すぐに、神戸大学医学部附属病院(以下、神大)を紹介されました。
紹介状を受け取っただけで、背筋が伸びてしまいます。
“ああ、これは大ごとなんや”と、ようやく現実味が出てきました。
神大では、手術方針の説明を受けました。
骨に細い金属を入れて固定し、
術後はリハビリで動きを取り戻すという話でした。
98歳の母には、どこまで望めるのか。
聞いているだけで、胸がぎゅっと締めつけられます。
そのあと、山ほどの同意書が並べられました。
輸血の説明、麻酔のリスク、もしもの時のこと。
“ここにサインをお願いします”と丁寧に言われても、わかっていません。
説明を聞きながら、気づけば指先が少し冷たくなっていました。
家に帰ってから、知り合いに電話をしました。
彼女は整形外科の看護師なので、アドバイスをくれるかと思ったんです。
「98歳で大腿骨やろ? そら手術やで。
先週も97歳のおじいちゃんが受けてたし」
その軽さに、思わず言葉を失いました。
私には人生が揺らぐような出来事でも、現場では“よくあること”やと知った瞬間でした。
手術の心配はもちろんありました。
それと同じくらい、“退院したあとの生活”も頭をよぎり始めました。
母とは別々に暮らしていました。
退院後は車いす生活になるかもしれません。
そうなると、これまで通り「ひとり暮らしを続ける」のは難しい。
かといって、すぐに同居の準備ができるわけでもありません。
どうすればいいのか。
ひとりで考えても答えは出ません。
担当のケアマネージャー(以下、ケアマネ)に事情を話して相談しました。
すると、「まずは状況を整理して、一緒に考えていきましょうね」
と言ってくださり、その声が張りつめていた胸の奥にふっと届きました。
ここから、私たち家族の“介護の入口”が静かに開きました。
生活が変わる予感だけが、そっと胸に残ったのです。
退院のタイミングで、初めて聞いた“ショートステイ連続利用”
手術の説明や同意書の山はなんとか乗り越えました。
となると、少しずつ気になり始めたのが「退院後、どこで暮らすのか」ということでした。
入院中は、どうしても“今日と明日”のことで精いっぱいなんですよね。
でも、いざ退院の日が近づくと、
「家には戻れへん。じゃあ次はどこへ?」
そんなとき、担当のケアマネさんから初めて聞いた方法にびっくりしたのが事実です。
“ショートステイを連続で利用する”
「え、それって制度的にアリなん?」
そう思わずにはいられなかった、あの瞬間から――
わたしのなかで、退院後の暮らしをめぐる葛藤が始まりました。
ケアマネの口から出た「ショートを連続でいきましょうか」
大腿骨の手術では、リハビリ期間は1か月ほどが一般的です。
でも、母の場合は九十八歳。
歩行を目指すというより、これからは車いすでの生活を前提にしていくことになりました。
となると、入院期間は意外と短く、だいたい二週間。
このあいだに、退院後の“暮らす場所”を決めなければなりません。
まずは母の自宅を考えました。
今まではなんとか自力で動けていたので、ヘルパーさんにお手伝いしてもらいながら暮らせていました。
でも、車いすとなると話は別です。
玄関の段差、階段、狭い廊下……どう考えても無理でした。
次に、わたしの家。
同じ市内なので、生活圏が大きく変わるわけではありません。
ただ、坂が多い場所で、家の中にも階段が多いんです。
「ここで車いすの生活は難しいな……」と感じました。
相談したケアマネさんも、いろいろ考えてくれました。
その中で出てきた言葉に、わたしは思わず聞き返したほどです。
「ショートステイをつないでいきましょうか。
そうすれば、最終的に入所につなげられますよ」
“ショートステイをつなぐ”という発想は、正直まったく知りませんでした。
でも、ケアマネさんが詳細を説明してくれて、
「ああ、それなら母の生活の流れも守れるし、急な同居より現実的やな」
と、胸の奥が少し軽くなりました。
説明されないまま既定路線になっていく不安
退院が近づくにつれ、「これ、制度的に大丈夫なん?」という不安がずっとありました。
ネットで探しても、ロングショートという言葉はほとんど見つかりません。
あっても、「ショートステイは短期利用です」という一般論だけでした。
家族が実際にどう使っているのかまでは、ほとんど書かれていません。
ケアマネさんからは「ショートを連続で利用していきましょうか」と言われました。
でも最初は、どうしてそれで大丈夫なのかが分からなかったんです。
ケアマネさんには悪いと思いましたが、何度も聞き返させてもらいました。
そこでようやく、「ああ、そういう仕組みなんや」と腑に落ちました。
● ショートステイを“つないで”いく流れ
- 退院後すぐショートステイへ
(まずは“最初の滞在先”) - 同じ施設で期間を更新して連続利用
(ここが“つなぐ”部分) - そのあいだに入所の可否を施設側が判断
(空きがあればそのまま入所)
不安ばかりだった退院後の道筋が、この説明でようやく見えるようになりました。
胸の奥につかえていたものが、すっとほどけていくようでした。
現場では“当然”のロングショート、その理由
ケアマネさんから提案された、ショートステイをつないでいく流れ。
現場ではこれを「ロングショート」と呼ぶんですね。
家族にとっては初耳なのに、専門職にとっては当たり前――
そのギャップに、思わず驚いたのを覚えています。
病院 → 自宅の直帰が難しいケースは多い
手術の前日、主治医の先生から説明がありました。
折れた大腿骨を支えるため、骨の中に金属を入れるそうです。
「髄内釘」という方法で、神大の整形ではよく行われる手術でした。
難しい言葉もありましたが、「内側から固定する」と聞けば十分でした。
母は98歳。
「歩くより、車いすでの生活を目標にしましょう」
先生は、そうやってゆっくり話してくれはりました。
その場合は、早ければ二週間ほどで退院になるとのことでした。
けれど、そこで新しい心配が生まれました。
私たちは別々に暮らしていますし、急に同居はむずかしいのです。
母の家は階段も多く、車いすでは動けません。
私の家も、介護を前提にした間取りではないのです。
「このまま退院して、どうしたらええんやろ」
そう思うと、胸がすうっと冷たくなりました。
ネットで調べても、退院後の行き先ははっきり書かれていません。
時間だけが過ぎていくのに、答えが見つからないのです。
思い切って、担当のケアマネさんに相談しました。
するとすぐに「受け入れ先を探してみますね」と言ってくださって。
その言葉だけで、心が少し軽くなったのを覚えています。
実際にすぐ動いてくださり、受け入れてくれそうな施設が見つかりました。
「これでひとまず安心できる」
そんな気持ちが、ようやく胸に戻ってきたのです。
施設側にとっても、ロングショートは実務的に合理的
あとから知りましたが、ショートステイを“つないでいく”方法は、施設側にとってもメリットがあるそうです。
まず、空いている部屋(空床)を有効に使えること。
そして、連続して利用してもらうことで、利用者さんの体調の変化を細かく見られるという利点があります。
短期間の入れ替わりより、同じ方を続けて受け入れられる方が、施設としても安心なのだと聞きました。
さらに、状態が安定していれば、介護度の変更や、正式な入所のタイミングも判断しやすい。
施設と家族の双方にとって、じつは合理的な流れなんですよね。
ただし、利用者側から“選択肢として知らされることはほぼ無い”
ただ、この“ロングショート”という方法は、家族にとってはほとんど知られていないのが現実です。
ケアマネさんや施設の方にとっては当たり前でも、家族は制度の素人。
その前提を忘れたまま話が進むことが多いんです。
ネットを探しても情報はほとんど出てきませんし、“短期利用です”という説明ばかり。
これでは、家族が判断しようにも材料が足りません。
「知っていれば、心の準備もできたのに」
「選べる選択肢が変わったのに」
そう感じる方は、きっと少なくないと思います。
わたしは今回の経験で、制度と現場のあいだにある“見えない段差”を初めて知りました。
その段差に、つまずく方が少しでも減ればいいな……そんな思いで書いています。
ロングショートの“実際の生活感”
ショートステイをつないでいく……と一言で言っても、そこで過ごすのは“生活そのもの”です。
制度上は「短期利用」でも、現場での滞在は二週間、三週間、一ヶ月と続いていくことがあります。
そのあいだの本人の気持ち、家族の揺れ、施設の空気──
どれをとっても、ネットにはまず書かれていない部分でした。
“ロングショート”は、書類の上では短期でも、実際には「暮らしの移行期」。
その中で、家族は何を感じ、どこに迷うのか。
ここからは、わたしが体験した“生活のリアル”をお話ししていきます。
ショートステイはあくまで“短期”のはずなのに
ショートステイは制度上「短期利用」とされています。
それでも、実際には二週間 → 三週間 → 一ヶ月と続くことがよくあります。
家族としては
「もう帰る?」ではなく、
「まだ家では無理なのかもしれない」と、判断が日に日に難しくなっていきます。
日ごとに体調が変わり、歩ける日と歩けない日が混ざってくるようになります。
そうすると、“家で見られるかどうか”の判断をつけるのがとてもむずかしい。
短期のつもりだった滞在が、少しずつ「生活の延長」になっていく──
ロングショートには、そんな“ゆるやかな移行期”の時間があります。
本人の戸惑いと、家族の揺れ
本人にとっても、環境が変わることは負担になります。
母も最初は部屋の場所や職員さんに慣れるまで時間がかかっていました。
「ここはどこ?」「まだ入院中?」という問いかけも頻繁にありました。
一方、家族は家での受け入れ体制を考えながら、
「このまま預け続けて大丈夫なのか」
「いつ頃なら戻れるのか」
そんなことを相談し続けながら、家族もまた“揺れながら”日々を過ごしていました。
滞在が長くなると、ショートステイは“お預かりの場”から、役割を変えるようになります。
それは、次の暮らし方を探るための“準備期間”のようなものなんですね。
“最終的な行き先”を誰もはっきり言わない現場の空気
医療や介護の現場では、言葉をとても選んで説明してくださいます。
「もう戻れませんよ」とは誰も言いません。
むしろ、状態を見ながら次のステップを一緒に考える形が一般的です。
ただ、家族としては“元の生活に完全には戻れないかもしれない”と、少しずつ現実を理解していく時期でもあります。
この“はっきり言われないけれど、状況で分かる”時間。
これが、多くのご家庭が経験する、介護の“ゆるやかな現実”なのだと感じました。
知っておきたかった“ロングショートの盲点”
ショートステイをつないでいくという方法は、現場ではよく使われています。
ただ、実際に家族側がその流れに乗ってみると……
「え、ここってどういう仕組みになってるの?」
「これって、どこまで大丈夫なんやろう」
そんな“小さな疑問”が積み重なってくるのも事実でした。
制度としては短期利用。
でも、生活の流れとしては連続利用。
この「制度」と「現場」と「家族の実感」の三つが、必ずしも同じではない。
ここに、ロングショートの“盲点”があるんですよね。
わたし自身、あとから知って「最初に聞きたかったな……」と思ったことがいくつかありました。
ここからは、家族として気づいた“制度と生活のすきま”を、やさしく整理してお伝えします。
介護度と利用日数の関係
ロングショートを経験してみて、いちばん驚いたのは
「ショートステイの利用日数って、こんなに柔軟なんや」
という点でした。
制度上は、介護度ごとに“このくらい使えます”という目安があります。
でも実務では、そこをある程度ゆるやかに運用している市町村が多いそうです。
こういったことは、制度の表にはまず出てきません。
しかも、この運用の幅は市町村によって大きく違うのだとあとから知りました。
「うちは割と柔軟に見てくれるんやね」と感じたのも、実際に動いてもらったからこそ分かったことでした。
家族としては、
「そんなこと言うてくれたら、もっと早く相談できたのに……」
と思う瞬間が多いのも事実です。
ショートの利用日数は“制度 × 現場 × 地域”のバランスで決まっていく。
そのことを知っているだけで、心の構えが少し変わると感じました。
本人が戻る場所を“どこ”と想定しているのか
ロングショートのあいだ、家族がいちばん悩むのは
「この先、どこに戻るのがいちばん良いのか」
という点でした。
ただ、この“戻る場所”は、家族だけで決めるものではありません。
本人・ケアマネ・施設・医療側──それぞれの見立てや希望が少しずつ違うことがあります。
この“想定のズレ”があるまま話が進むと、家族は不安を抱えたままになります。
わたし自身、できれば同居を視野に入れたい思いもありました。
けれど、家の構造やふだんの生活リズムを考えると、急に母を迎えるのは現実的ではありません。
「理想」と「現実」のあいだで揺れる──そんな時間がしばらく続きました。
でも、あとから思えば、最初の段階で“どこを目指すのか”を言葉にしておくことが大事でした。
この“ゴール地点の仮置き”があるだけで、家族の気持ちはぐっと軽くなります。
ロングショートは「次の暮らし方を探す時間」。
だからこそ、本人と家族の“戻る場所のイメージ”を揃えておくことが、何よりの安心につながるのだと思いました。
家族の生活リズムも変わる
ロングショートの期間は、気持ちが軽くなる……
そう思っていたのですが、実際はその逆でした。
滞在中は、意外と雑用が増えるものです。
ケアマネさんとの話し合いが入ることもあるので、家を空ける時間が増えていきます。
「どうして、こんなに雑用があるんだろう……」
そんなふうに感じたこともありました。
さらに、今後の暮らし方を考えるために、ベッドや手すり、段差のこと、入所待機の状況……
家にいても、ずっと“次の段取り”を考えてしまいます。
ロングショートは本人だけでなく、家族の生活リズムも静かに変えていく時期でもあるんですよね。
でも、その変化を経験したことで、
「どんな環境なら安心して暮らせるのか」
を、家族として冷静に考えられるようになった気がします。
わたし自身、慌ただしい日々に振り回されながらも、少しずつ“次のステップ”が見えていったのは、この時期でした。
ロングショートが“悪いこと”ではなく、“現場では自然な選択”だと知った日
倒れた直後の生活というのは、家族が思う以上に不安定です。
それだけではなく、「とにかく今日をどう守るか」という視点で動かざるをえない日が続きます。
そんな中でケアマネさんから提案されたのが、このロングショートでした。
最初は“預けっぱなしみたいで悪いな”という気持ちが胸をかすめました。
でも、話を聞いていく中で、現場ではごく自然に選ばれている方法なんだと気づきました。
ショートステイをつないでいくというのは、本人の安全を確保するための、いちばん現実的な手段なんですね。
退院直後は体力も気力も揺れます。
ショートステイに預けた直後、食欲が落ちていると連絡を受けたこともありました。
家での生活に一気に戻すのは思っている以上に負担が大きくて、無理が出やすいんです。
だからこそ“まずは安心して過ごせる場所にいる”ことが、次の生活につながる土台になるのだと感じました。
家族にとっても、ロングショートは救いになりました。
家に戻したい気持ちはあります。
でも、介護の段取りや生活リズムをすぐに整えるのは難しくて、気持ちばかり焦ってしまうんですね。
わたしの場合は、別に暮らしている、というのも大きかったと感じています。
実家の近くか、自分の暮らしの側か。
簡単に決められる話じゃなくて、考えれば考えるほど胸がぎゅっとするような選択なんですよね。
その間を静かに支えてくれるのが、この「つなぎ」の期間なんだと思いました。
過ごす場所が確保されるだけで、家族の疲れ方が全然違いました。
それに、介護認定やサービスの調整も、この期間に少しずつ形が見えてきます。
状態が安定するまでは“どこまで支援が必要なのか”も分かりにくいものです。
家族だけで判断しようとすると、どうしても迷いが大きくなります。
ロングショートは、その迷いの中で立ち止まる時間をくれる仕組みなんや。
そうやって、ようやく実感できたんです。
そのきっかけになったのが、制度の全体像を知ったことでした。
“預けてしまっている”という罪悪感がすっと軽くなったこと。
現場では普通に選ばれている流れだとわかる。
それだけで、家族の心の負担はこんなに変わるんだと驚いたほどです。
知っていれば、あの日の不安は半分だった
あの日のわたしは、毎日が揺れていました。
倒れた母の前で、自宅に迎えたい気持ちと、現実には難しいという事実。
この二つのあいだで、心が何度も行き来していたんですね。
ロングショートの全体像を知るまでは、“預けてしまう”ことに抵抗もありました。
けれど、現場の空気や制度の流れを理解するほど、考え方が少しずつ変わっていきました。
家族だけで抱えこんでしまって、つらい選択に追い込まれないための仕組みでもある。
“暮らしを守るための選択肢”なのだと、ようやく腑に落ちたんです。
最終的にわたしたちは、母が安全に暮らせる場所として、施設での入所待機をお願いする道を選びました。
簡単な決断ではありません。
でも、母が安心して過ごせる環境を整えることが、いまの生活にとっていちばんの支えになると感じたんです。
この記事は、専門家の目線ではなく、当事者として迷い続けた“ひとりの家族”の備忘録です。
あのときのわたしが知りたかったことを、未来のどこかのご家族にそっと手渡したくて書きました。
迷いながら選んだ道でも、いいと思うんです。
暮らしを守るための選択なら、それで十分や、と。
そう思えるだけで、心の負担はすこし軽くなるはずです。
この記事が、その一歩をそっと支える“手すり”みたいな存在になればうれしいです。
どうか、同じように揺れている誰かの背中が、そっとあたたかくなりますように。
※ここでお話ししている内容は、あくまで私の経験にもとづくものです。
制度や運用は地域によって異なりますので、具体的な手続きは担当のケアマネさんや市区町村の窓口に確認してみてくださいね。