冬のため池には、静かでやさしい時間が流れています。
寒い朝でも黒い体のオオバンがすいっと泳ぎ、まるで先導するように水面を進みます。
そのすぐ後ろを、茶色いカモたちがのんびりとついていく。
色も形も違うのに、不思議と調和があるんですよね。
ある日、思わず笑ってしまう光景を目にしました。
オオバンが水中にぐっと潜り、細長い水草を引っぱり上げたその時です。
横からスススッとカモが寄ってきて、その水草をちょこんとついばむ。
「えっ、取られた……?」と一瞬驚きました。
でも、オオバンは怒るでもなく、またすぐに潜って次の草を取りに行きました。
まるで「はいはい、どうぞ」とでも言うような、ゆるい空気。
その繰り返しがなんとも微笑ましくて、水面の上に小さな優しさが広がっているようでした。
あとで調べてみると、これは冬の池ではよくある“ゆるい共存”なのだそうです。
オオバンは潜るのが得意で、沈んだ水草を引き上げるのがうまい鳥。
一方、カモは深く潜るのはちょっと苦手。
だから、横からついばむほうが手っ取り早い。
群れの中に一緒にいる、オオバンが取ってくれた水草を少し分けてもらう。
カモにとってはそれだけで十分なんですって。
でも、恩恵を受けているのはカモだけではありません。
オオバンにとっては、カモの群れのそばにいることが“安全”につながるんです。
タカやカラスの影が差したとき、真っ先に気づくのはだいたいカモのほう。
群れで暮らすカモたちは、自然と“見張り役”が生まれるようで、よく周りを見ています。
つまり、何かあったときの警戒の合図が早いんですよね。
オオバンは体が大きいので、飛び立つのが少し苦手。
カモたちの“警報システム”の近くにいられるのは、大きな安心なのだと知りました。
ちょっと見ただけでは損をしているんじゃないのっていう光景。
でも、お互いに”うぃん×うぃん”の関係なんですよね。
種類が違っても、争わずに同じ水面を共有している。
そんな姿を見ていると、なんだか胸の奥がじんわり温かくなります。
冬のため池は静かですが、静けさの中にも小さなドラマがあります。
今日もきっと、黒と茶色の仲間たちが、ゆるやかなリズムで共存しているはず。
その景色を思い出すだけで、少しだけ心がやわらかくなるような気がします。