カモの一個小隊がやって来る冬|ため池の小さな旅人たち

コラム

冬になると、西区のため池に、ほとんど毎日のようにやって来る“顔ぶれ”があります。
初めてその姿を見かけたのは、風の冷たさがいよいよ本格的になってきた十二月のはじめ頃だったでしょうか。
池の上をすいすいと滑るように進む、五羽ほどのカモの小さな列。
私は勝手に“カモの一個小隊”と呼んでいます。

面白いのは、その隊列がいつも同じような並び方をすることです。
先頭は気の強そうな子で、後ろに続くのは落ち着いた雰囲気の二羽。
いちばん後ろを、ちょっと慌てたように追いかける若い子が一羽。
その日の風向きや水面の光り方で多少前後しながらも、なんとなく固定メンバーなのだろうと思わせる動き方をします。
ため池に冬の常連さんがいるなんて、なんだか微笑ましいものですね。

ところが、この“一個小隊”は、午前と午後で人数(羽数?)がまったく違う姿になることがあります。
朝のうちは五羽で並んでいたはずなのに、ひとり、またひとりと、どこからか仲間が合流してくるのです。
気がつけば十羽を越え、多い日には二十羽ほどの大所帯になることもあります。
おそらく近くの池や川から移動してきた別の小隊が、風の具合や餌の“当たり”に誘われて、
そのまま仲間入りしているのでしょう。

人間のように自己紹介があるわけではありませんが、水鳥たちには水鳥たちなりの距離感があるのでしょうね。
「今日はここが良さそうだね」と、自然に合流するタイミングがあるのだと思います。
強い日差しが出た午後や、逆に曇りの日など、池の条件が整ってくるほど群れが大きくなっていきます。
それを見ると、このため池が“冬だけの休戦地”のように思えてきます。

大きな群れになると、池全体がふわっと賑やかになります。
水面で跳ねる小さな波、羽ばたく音、水草をついばむときの「コツコツ」という控えめな音。
その中に、ほかの種類の鳥――
黒い姿がかわいらしいオオバンが混ざることもあります。
種が違っても争う気配はなく、餌のある場所を譲り合ったり。
ときどき横取りしたりしながらも、どこか穏やかな空気が流れています。

冬のため池は、ただ冷たいだけの場所ではないように感じます。
小さな旅人たちが集まって、束の間の“居場所”をつくっているように見えます。
50代の私が子どもの頃に見ていた冬より、少しだけ静かで、少しだけ優しい冬。
ふだん忙しく過ぎていく日々のなかで、こうした光景を見つけられる。
それだけで、季節とほんの少しだけ仲良くなれたような気がするのです。